5th
ポピュレーション符号化モデルの検証及び運動知覚メカニズムのモデル化
堀健太郎
我々は動いているものを見ると,それがどの方向にどの程度の速さで動いているかを知覚することができる.運動知覚の情報は視覚から得られ,網膜から脳へと伝搬される.人間の脳内では,電気信号として情報を伝搬し,その情報から知覚を得ている.つまり,視覚から得た情報は電気信号に符号化され,その信号を復号化することにより知覚が生じているのである.情報の符号化は脳を主としたニューロンで行われる.したがって,運動知覚メカニズムを研究することで,脳の働きを明らかにすることができる.
運動知覚メカニズムの研究は,これまで数多く行われてきた.近年もっとも行われているのが運動知覚メカニズムのモデル化である.モデルを作成し,そのモデルと心理実験の結果などを比較,検証することで,脳内メカニズムの仮説をたてるわけである.この中で最も代表的なモデルがポピュレーション符号化モデルである.ポピュレーション符号化モデルが様々な心理実験結果に妥当であることは多くの研究結果から知られている.
しかし脳内メカニズムを完全に説明するのであれば,あらゆる心理実験に妥当である必要がある.単に心理実験と言っても測定したいものが何であるか(閾値や精度など)や実験方法によって数多く存在する.それらの心理実験結果をすべて満足に説明できなければ,脳内メカニズムを理解したとは言い難い. ポピュレーション符号化モデルのある一つの心理実験との妥当性は知られているが,複数の心理実験に対し同時に妥当性を持つことができるかどうかはまだ検証されていない.
本研究は運動知覚メカニズムの研究を目的として,ポピュレーション符号化モデルと心理実験の妥当性を検証し,ポピュレーション符号化モデルが脳内メカニズムを表現するのに十分なものであるかどうかを検討する.もし不十分であるならば,ポピュレーション符号化モデルに不足している機構を考察し,その手法を用いてポピュレーション符号化モデルを拡張し,運動知覚メカニズムを検証する.